「いいね!いく~!」

「あたしも行きたい!」

マミとみやびが賛同する。

小銭を痛いぐらいに握りしめる。

あたしをイジメるだけではなく、今度はお金まで奪うの……?

人のお金を奪い、キャッキャと盛り上がる3人。

かたや、床に這いつくばって小銭を拾うあたし。

悔しさと怒りで頭がおかしくなりそうだ。

どうしてこんな理不尽なことをされるのか理解できない。

どうして、ばかりが頭の中に浮かんでは消えていく。

自然と涙が溢れ、床に小さなシミを作った。

そのシミは、一つ二つと増えていく。

それと同時に心の中には真っ黒なシミが浮き上がってくるのを感じた。

悪魔のような3人に対抗するには正攻法ではダメなのかもしれない。

――コロシテヤリタイ。

初めて殺意に似た感情が沸き上がってきた。

「今日の体育って体育館だっけ~?」

「ヤバっ、そろそろいかないとじゃない?」

教室からクラスメイト達が慌ただしく飛び出していく。


シーンっと静まり返った教室内にあたしのすすり泣く声だけが響く。



「……あの……」

斜め上から突然声がして、思わずびくっと体を震わせる。

ふいに目の前に差し出された手のひら。

まぶたに浮かんだ涙を指で拭って顔をあげると、そこにいたのは柴村さんだった。

あたしが泣いている間に、柴村さんは床に散らばった小銭を拾い集めてくれていた。