「あっ……」


そして、あたしの許可なくチャックを勝手に開けるとバッグを逆さまにして振った。

止める間もなかった。中身がバラバラと床に転がる。

マミは床に転がったお財布を手に取るとにんまりと満面の笑みを浮かべた。

「借りるだけだから」

財布を開けてなけなしの5千円札を掴むと、マミは再び財布を床に放り投げた。


「あっ……」

その拍子に小銭が床に散らばる。

それに気付いているはずなのに、マミは知らんぷりを決め込む。

あたしは慌てて床に這いつくばり、硬貨を探す。

いたるところに飛び散った硬貨を必死に拾い集め、遠くに転がっていった100円玉に手を伸ばすと、綾香があたしの手の甲を上履きで踏みつけた。

「――痛っ!」

「あっ、ごっめーん!足が滑っちゃったわ」

グリグリと上履きで手の甲を踏みつけられ顔を歪める。


「ねぇ、マミとみやびって今日暇?久しぶりに映画でも観に行かない?」

綾香はあたしに背中を向けると、床に散らばる硬貨をあちこちに蹴飛ばしながらマミとみやびのところに向かった。