「――それで?話っていうのは何かしら」
職員室の隣にある生徒指導室に入るなり、若菜先生は単刀直入に尋ねた。
「先生、あたしがどうして髪を濡らしてジャージ姿でいるのか分かりますか?」
逆に聞き返した。先生だって気付くはずだ。
あたしのこの格好を見れば。絶対に。
「あぁ、そのこと。そういえば、あなたさっきの授業の間、一体どこにいたの?」
「トイレです」
「トイレ?……そういうことね。分かったわ」
口から溜息交じりに息を吐く先生はこめかみを押さえた。
真っすぐ向けられる視線。その視線になぜか怒りを感じる。
「全部聞いたのよ。あなたが教室の中でふざけてコーラを振って遊んだって。それで床を濡らしたんでしょう?それなのに片付けもしないでトイレにこもって授業をサボるなんてもってのほかよ」
「先生……、何言ってるんですか?」
目が点になる。
意味が分からない。どうして高校生にもなってコーラを振って遊ぶ?
それで床を濡らした?自分の髪の毛も?制服も?
片付けもしないでトイレにこもる?
なにそれ。そんなことありえない。
ありえないと思わないほうがありえない。



