柴村さんは黙ったまま微動だにしない。

頭を垂れている彼女の顔は長い黒髪によって遮られ、どんな表情か見て取ることはできない。

ここで柴村さんが泣いたり、『やめて』と懇願すれば3人は引いたかもしれない。

柴村さんは3人に罵声を浴びせられても、悪口を言われても、机を蹴られても、消しゴムを投げられても全く反応しない。

自分の殻の中に閉じこもって、心が壊れないように必死で自分自身を守っているのかもしれない。

けれど、それが3人のイジメをさらにエスカレートさせていた。


「何とか言えよ!!」

反応のない静子にいだらった綾香が柴村さんの机を正面から右足で思いっきり蹴った。


「……うぅ」


今まで何の反応も示さなかった柴村さんが思わず声を漏らす。

机が柴村さんの腹部にめりこんでいる。