ジッと3人を見つめていると、マミと目が合った。

マミは眉間にしわを寄せてあたしを睨んだ

「――逢沢。アンタ、何見てんだよ!」

パッと目をそらしたもののムダだった。

あたしの席までやってきたマミはあたしの机を両手で叩いた。

バンッという乾いた音が教室中に響き渡る。

その瞬間、教室内の空気が変わった。

クラスメイトは不穏な空気に気付いているはずなのに、見て見ぬふりを決め込む。

助けようとする人などだれもいない。

みんなの心の声が聞こえてくる。

『巻き込まれたくない』

そう思っているに違いない。

「なにか言いたいことでもあるわけ?」

「別に……」

言いたいことなら山ほどある。

けれど、あたしは言いたいことをぐっと飲みこんで拳をきつく握った。

後ろからやってきた綾香があたしの前髪をわしづかみにしてグイッと持ち上げる。

「いたっ……」

強制的に顔を持ち上げられて顔がゆがむ。

「あんまり反抗的な態度とるとどうなるか分かってるよね?日野田の写真バラまかれてもいいわけ?」

綾香がニッと笑う。

「――やめて!!それだけはお願い……!」

「だったら、大人しくしてろよ。また柴村のことかばおうとしたら、アンタも日野田と同じ目にあわせてやる」

綾香は乱暴にあたしの前髪を離した。

ブチブチッと音を立てて抜けた前髪がパラパラと机に落ちる。

あたしはそれを呆然と見つめた。

これがれっきとしたイジメだ。

理由もやり方もきっと違う。

でも、自殺した妹の美亜もこんな気持ちを味わったに違いない。

絶望に押しつぶされ、命を絶った。

イジメはその人を殺すと言っても過言ではない。

心にも体にも、消すことのできない大きな傷跡をつける。