「よかったね、とりあえず楽になって。きっとウサギもね、今は様子がわからないから気になるけど、行っちゃえば楽になるんじゃない?悩まなくていいから。
異動って、次がどんな感じかな、受け入れてもらえるかなっていうときが一番つらいでしょ。私もチーム移るたびいやだよ。部内でも」

三上くんは、ちょっと驚いたように私を見た。

「そうか、そうだよね。俺、いろんなとこ行けて真奈ちゃんは楽しそうとか思ってた」

それもそうだけど、結構大変なのだよ。

「なんかね、移るときに、ここでもいらなかったのかな、とか思う」

同期に話したことないけど、今日はいいかなと言ってみる。三上くんの気持ち、少しはわかる気がするよ私。

「今、オレ、まさにそんな心境。そうか、真奈ちゃんが苦労してるとか気づいてなかったよ、ごめんね」

え、別に謝られるようなことないよ。色んな経験させてもらってるのもわかってるけど、ちょっと焦ってただけ。




「でもさ、仕事よりなにより、オレ開発離れるのが嫌なの。好きなんだよ、今の環境」

「そうだね、私も好き」

「さみしいんだよ、みんなと離れるの」



もう泣きそう? ここで泣かないで、三上くん。

いつもの居酒屋のがやがやした座敷とわけが違うからね。こんなカウンターで男の子泣かしてたら、私どうしていいかわからないよ。



「ウサギって一度行ったら戻れないって言うし、なんでオレなんだよって思う」

そうだよね、私も思う。三上くんじゃなくてもいいんじゃないのって。例えば、私とか。もちろん嫌だけど。



ごめんね、三上くん。

かわいそうだなって思いつつ、実は自分じゃなくてよかったなって結構思ってるんだ私。色々回された挙句本社から追い出された形になったら、さすがに落ち込んじゃったと思うんだ。