いつもの駅近の居酒屋だと会社の人が来るかもしれないから、どこに行こう。前に香さんと行ったダイニングバー? 仕事が片付くのを待っていてくれた三上くんに声をかける。

「去年できたらしいスペインバル知ってる? ここから近いし、お酒の種類も色々あるよ」

へえ、そういうところ行ったことない。行ってみたい。



駅までの道を歩かずに、横道へそれて狭い路地に入る。こんなところにあるお店なんだ。

銘木を使っていそうな重たい木製ドアを開けると、そこはカウンターメインの小さくて細長いお店だった。奥のほうにテーブル席もある。小綺麗で女子が好きそうな、でお酒もしっかり飲めるところだね。



三上くんは、にこやかに「2人なんですけど」とお店の人に言っている。私にはちょっと敷居が高いおしゃれなお店。連れてきてもらわないと入れないなぁ。

バルってバーのことだよね? お酒メインなのかと思ったけど、メニューも豊富で、結構美味しい。



「よく知ってるね、こんな小さなお店」

「なほちゃんと来たんだ、前に」

ああ、元カノのなほちゃん。

3か月前くらいに別れて、その前後も結構落ち込んで私達に慰められてた。割と女子だから、話を聞いてほしがるんだよね、王子は。男の人って恋愛がらみの弱みを見せないのではないかと思っていたのですが、三上くんは寂しがりやさんだ。

あれ?でもなほちゃんとの思い出の場所に来ちゃうんだ? 吹っ切れたの?



「三上くん、なほちゃんと来たお店に来ても大丈夫なの? 新しい彼女できたの?」

「いや、そんな簡単にできないけど。仕事も楽しいし、なほちゃんとのことで悩まなくなって楽にはなった。揉めてたときの方が辛かった」

カウンターで隣に座った三上くんは恥ずかしそうに話す。酔って泣いてたこと思い出してるのかな。男の子達に連れて帰られてたね。



でも、もう大丈夫なんだ、意外とあっさりしてるんだ。切り替え早いタイプ?もっとドロドロと落ち込むタイプかと思ってた。