『あ、萌音ー! 』

『夕凪ちゃん! おはよう』

『おはよ! あ、これお祝い! 』



そう言って食堂のテーブルに広げられたのは、色とりどりのパッケージに包まれたチョコレート。



『うわぁ、ありがと! 』

『喜んでくれてよかった! 』

『え、でもこれ…』


パッケージに書かれているメーカーの名前は、コンビニなんかには売ってない、なかなかの高級品の名前。

それに…。


『実は外出許可が出ててさ。今日朝イチで出掛けて買ってきたの! 』



そう、ここのチョコレートは人気商品で、開店してたった2時間で完売するとの噂。


確かにこの病院そばに支店はあったけど、それでも買うのは大変だったはずだ。


そう考えると、胸がグッと熱くなった。


溢れてきそうになった涙を堪えて、ニッと笑った。


『夕凪ちゃん、ありがとう』

『へへっ、喜んでくれてよかった。ねえ、今から萌音も外出許可とって一緒に出掛けない? 』


思いがけない提案に、私は目を輝かせて即答した。


『うん! 』

『よし、そうと決まったら早くご飯食べて! 』


ホラホラと急かす夕凪ちゃん。


そんな夕凪ちゃんの期待に応えるべく、私は箸を動かすスピードを速めた。