しかしその後聞こえてきた声に私は立ち止まってしまう。
「俺、好きな人いるから無理。」
それは紛れもなく小林くんの声で…
小林くんがモテることは百も承知だったし、今更告白されてることに驚く気はない。
ただ彼に好きな人がいるという事実に驚いた。
そしてその事実になんだか胸がモヤモヤして…
隣にいたあすちゃんが私の肩をトントン叩く。
「綾香、早く行こ?」
小声であすちゃんにそう言われて、私も頷いて再び歩き出した。
別校舎の廊下を歩きながら私は口を開く。
「あすちゃん、さっきの告白って…」
「小林宛、だったみたいね。」
「だよね…」
よくわからないけど胸がモヤモヤして、自然と声がいつもよりも低くなる。
「綾香、小林のこと気になるの?」
あすちゃんの声が楽しそうに言葉をつむぐ。
…あすちゃん、今ニヤケてそう。
あすちゃんからあえて視線を外して前を見て歩いている今、彼女の顔は見えない。


