ガラガラと扉を開く音がした。
「大翔〜」と言う声とともに女子が2人、姿を表した。
2人…正確にはそのうちの1人を見て俺は思わず息を飲んだ。
すぐに目をそらし読んでいた文庫本に視線を落としたが、内容は入って来なかった。
入ってきた女子2人、「大翔」とさっき名前を呼んだ中杉明香とその後ろに隠れながらついてくる文野綾香。
この2人は俺らと同じクラス。
──そして文野綾香は俺の片想いの相手でもあった。
大翔は俺の片想いの相手が綾香のことだと知らなかったが、一回好きな子がいると話してしまったことがある。
今まで好きな相手が文野綾香だということは内緒にしていたのだが、綾香話を聞いて気づいてしまった。
…コイツ、ホントに無駄に勘がいいよな。
まぁ、でも綾香が小学生のときに1回しか会っていない俺を覚えていてくれてたのが嬉しかった。
…小学生のときに助けたやつが俺だとは気づいてなかったけど。
それどころか俺は女だと思われていたらしいが。


