どこからか、吹奏楽部の演奏が聴こえてくる。


沈黙は続いたままなのに、気まずさは感じなかった。


あすちゃん以外の…それも男子と二人っきりになるなんてほとんどない。


普通なら嫌だと感じるのに、小林くんなら平気みたいだ。


…むしろ、もっと隣りにいたいかも。


って私、なに考えてるんだろう。


「あ、綾香たちやっと来た!って、綾香なんか顔赤くない?」


「へ?」


「真弘もなんか顔赤いけど、ふたりともなんかあった?」


「…夕日のせいだろ。」


小林くんはそう言うとすぐに男子の下駄箱の方へ歩いていった。


「あ、ちょっ真弘待てよ〜」


そのあとを今川くんが慌ててついて行く。


「綾香、さっき小林となにがあったの?」


男子ふたりが見えなくなってからあすちゃんは楽しそうに聞いてきた。


下駄箱でローファーに履き替えながら私はあすちゃんにさっきのことを話した。


「あ、明香〜!綾香ちゃん!」