王は小さく、「そうか」と抑揚のない声で言い、また歩きはじめた。
指定した二ノ談部屋に着いたとき、先程の近侍が待っていて、深く礼をした。
「恐れながら我が君、統括部長と大臣がまだお着きでなく」
「よい。彼等の仕事が終わらぬうちに、予がいきなり招集をかけた。ここで待つゆえ、気にせず務めを果たしたのち来るよう申し伝えよ」
部屋に入りながら、ヒラリと手を振る。
戸がピタリと閉じられ、近衛たちがその前に整列した。
次の瞬間、凄まじい、何かが倒れて割れるような音が、部屋の中から響いた。
パッと近衛たちが戸の方を振り向き、一斉に剣を抜く。
「我が君、失礼いたします」
無表情ながら、早口で近衛の一人が戸を開けた。
と、思わず何事にも動じない彼らが固まる。
王が一人、静かにたたずんでいた。
窓際にある台に飾られてあった大きな壺だろう、粉々になって、彼の足下に無残に散らばっている。
「………わ、が君……」
近衛の一人がようやく声をかけると、長い藍色の髪が動き、彼らの方へゆっくりとその美しい顔が向けられた。
「……………」
皆、身動きがとれない。
その表情に、誰かがごくり、と喉をならした。
「虫だ」
まるで独り言のように言い、ザリッ、と右足を回してゆっくりと上げる。
黒い甲虫が一匹、醜く潰れて、触角をピクピクと震わせていた。
指定した二ノ談部屋に着いたとき、先程の近侍が待っていて、深く礼をした。
「恐れながら我が君、統括部長と大臣がまだお着きでなく」
「よい。彼等の仕事が終わらぬうちに、予がいきなり招集をかけた。ここで待つゆえ、気にせず務めを果たしたのち来るよう申し伝えよ」
部屋に入りながら、ヒラリと手を振る。
戸がピタリと閉じられ、近衛たちがその前に整列した。
次の瞬間、凄まじい、何かが倒れて割れるような音が、部屋の中から響いた。
パッと近衛たちが戸の方を振り向き、一斉に剣を抜く。
「我が君、失礼いたします」
無表情ながら、早口で近衛の一人が戸を開けた。
と、思わず何事にも動じない彼らが固まる。
王が一人、静かにたたずんでいた。
窓際にある台に飾られてあった大きな壺だろう、粉々になって、彼の足下に無残に散らばっている。
「………わ、が君……」
近衛の一人がようやく声をかけると、長い藍色の髪が動き、彼らの方へゆっくりとその美しい顔が向けられた。
「……………」
皆、身動きがとれない。
その表情に、誰かがごくり、と喉をならした。
「虫だ」
まるで独り言のように言い、ザリッ、と右足を回してゆっくりと上げる。
黒い甲虫が一匹、醜く潰れて、触角をピクピクと震わせていた。
