デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「…………」

未経験のシチュエーションに、頭をぐるぐると働かせた。

勿体のうございますと言ってあくまで辞退するのがいいのか、それとも押しいただいて飲むのがいいのか。

「……アラエさん?」

「え、あ……」

グラスを載せた小さな盆を持ったまま、桜が首をかしげた。

「お茶、苦手ですか?」

「いえ、そんな……ご客人の手ずから王の臣下になどと……勿体のうございます」

咄嗟に辞退する方を取った。

すると、少し眉を下げて桜は言う。

「アラエさん、私は偉くもないし、ここにお世話になってる居候なんですから……こないだも言いましたけど、普通にしててください」

さっき桜に対して思ったことを言い抜かれ、ギクリと固まった。

「で、ですが………」

目を伏せ、なおも困惑した顔をするアラエを見て、桜はふと思い至った。

「あ……そうか、すみませんアラエさん。私の注いだのなんか、飲みたくないですよね」

「えっ?」

思わず彼女の顔を見ると、小さく苦笑いしていた。

「いえ、そ、そのような……」

「ううん、いいんです。学校の給食でも、私が注いだやつは押し付け合いでしたから。こちらの世界の方がみんな優しくしてくれるから、忘れていました」