デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

一介の新米王都武官が、公宮より奥に立ち入ることを許されるなど、まずあり得ない。

「恐れながら我が君……よろしいのですか……」

良くはないわと言いたいのを抑えて、苦笑いした。

「街に出られぬなら、落ち着いて話をする場所もあるまい?宮中は誰に話を聞かれているとも分からぬからな。桜の部屋なら、邪魔されることもなかろうよ」

紫色の目をそらし、組んだ脚の膝の上でぎゅっと手を組む。

シュリは、そんな主君の心中を思った。

桜は、あの近侍と王から好きだと言われたと言っていた。

ならば、愛しい女の部屋に夜まで自分が入るのを許すのは、相当苦しいに違いない。

感謝と、少しの罪悪感と、それでもこれを畏れ多いと辞退できない桜への恋情に、シュリは深く頭を下げた。

「ありがとうございます、我が君」

静かに立ち上がり、退出した。

その後ろ姿を見送ったあと、王は深いため息をついた。まるで、胸の中の毒を抜こうとするかのように。