「え……?」
怪訝そうなその声に、苦笑した。
「何だ、知らなかったか。私が今お前がやってた連絡係をやっているのさ」
「!」
カナンの表情の変化には気づかずに、
「外見だけじゃなくて、中身も訳わからん……ああ、客人に対して不敬か……珍しい娘だな」
「………」
「平気で他人に頭を下げるし、お前みたいな若輩の近侍に会うために我が君に無理を通すし。表情からして嘘もつけないし、あれじゃすぐにつけこまれるな」
黙ったまま、カナンは唇を噛んだ。
努めて考えまいと、一昨日から過ごしてきたのに。早く忘れて、思い出の人として見ることができるように、心を殺そうとしていたのに。
何のために、好きな女ができたなんて一番つきたくない嘘をついたのか。
桜。桜。
忘れられない。嘘をついたまま、騙したまま忘れるなんて、頭でわかっていても、心が悲鳴を上げる。
この、先輩近侍にも頭を下げたのか。
あの屈託のない笑い顔を見せたのか。
深宮までのあの渡り廊下を、どんな顔で二人で歩いているんだ?
会いたい。会って抱きしめて、キスをして、全部嘘だと言えたらいいのに。
「哀れになるくらいの不細工だが……変わってるからか、妙に印象に残る娘だな」
笑ってもう二歩ほど先を歩き出した先輩の背中を、カナンは睨みつけた。
(私が身を引いたのは、桜自身の選択を大切にしたかったからだ。……万一手を出したら、殺してやる)
怪訝そうなその声に、苦笑した。
「何だ、知らなかったか。私が今お前がやってた連絡係をやっているのさ」
「!」
カナンの表情の変化には気づかずに、
「外見だけじゃなくて、中身も訳わからん……ああ、客人に対して不敬か……珍しい娘だな」
「………」
「平気で他人に頭を下げるし、お前みたいな若輩の近侍に会うために我が君に無理を通すし。表情からして嘘もつけないし、あれじゃすぐにつけこまれるな」
黙ったまま、カナンは唇を噛んだ。
努めて考えまいと、一昨日から過ごしてきたのに。早く忘れて、思い出の人として見ることができるように、心を殺そうとしていたのに。
何のために、好きな女ができたなんて一番つきたくない嘘をついたのか。
桜。桜。
忘れられない。嘘をついたまま、騙したまま忘れるなんて、頭でわかっていても、心が悲鳴を上げる。
この、先輩近侍にも頭を下げたのか。
あの屈託のない笑い顔を見せたのか。
深宮までのあの渡り廊下を、どんな顔で二人で歩いているんだ?
会いたい。会って抱きしめて、キスをして、全部嘘だと言えたらいいのに。
「哀れになるくらいの不細工だが……変わってるからか、妙に印象に残る娘だな」
笑ってもう二歩ほど先を歩き出した先輩の背中を、カナンは睨みつけた。
(私が身を引いたのは、桜自身の選択を大切にしたかったからだ。……万一手を出したら、殺してやる)
