王がそんな事を考えながら執政の間に入る頃、王に提出する定期の報告書をたずさえたシュリは王都の大門の前にいた。

おびただしい数の人間や荷車が、今か今かと開門を待っている。

巨大で堅牢なその門は、衛兵が十数人がかりでやっと片方が開くほどの重さなので、時刻になってもすぐに通れるというわけではない。

桜に会える嬉しさで、手綱を握る手もそわそわと落ち着かない。
アスナイのことは心に引っかかっていたが、今は早く謁見を終わらせて、少しでも彼女の近くにいたかった。
たとえ会えるのが夕方からだとしても。

(また、かわいくなってんのかな)

そんな事を思い、思わず顔が赤くなる。

今夜はどこに連れて行こう。自分がついているから、少しくらい夜遊びしてみてもいいかもしれない。

あれこれ考えているうちに、地響きのような重く鈍い音と共に、大門の片方がゆっくりと開き始めた。

人の波に呑まれないよう、かつ周りの人間に怪我をさせないように、巧みに手綱をさばきながら、王都の中へと入っていった。