同僚がひひっ、と調子よく笑う。

「お前、惚れた女が王都にいるんだったよな」

「……プライバシーも何もあったもんじゃないな」

「その女に会いに行くのか?今から」

そう聞かれ、口をつぐんだ。

「いや……そう簡単には会えない場所にいる」

「へ?そうなのか」

「ああ」

ふうん、と相槌を打ったあと、同僚は笑った。

「じゃあよ、心はその女にいつも置いとけよ。でもコッチはそれだけじゃどうしようもねーだろ。その女がお前の目の前にいるわけじゃない以上、抱けやしねえんだから」

「…………」

ホラ行くぞ、と色街の方へと腕を引っ張る。


――“お仕事の付き合いなら、平気で他の女の人にこういう事するんだ”

じっと自分を見上げた、愛しいあの瞳。

――“私、そんな人嫌いだなあ。武官の奥さんなんて、無理”


フッと笑って、ゆっくりとつかまれた腕をほどいた。

「アスナイ?」

「俺はやめとく。宿に帰って寝る」

「何だ、バレたら怖いのか?もう尻に敷かれてんのか」

からかう同僚に、静かに笑った。