デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「危険と言ったはず。いたずらに私の手を煩わせるか」

「でも……でも」

何とか説得しようと桜が口を開くと、くっ、と片手で顎をつかまれた。

「……これだから、行かせたくはなかったのだ」

顔を上向かせたまま、苛立たしげにその紫の瞳を細める。

「神児に、魅入られるなと言ったであろうに」

びっくりして、口を開いた。

「な、何おっしゃってるんですか、エヴァさんは」

女の子でしょう、と言おうとして、口をつぐむ。

「男ではない。が、女でもない。分化の後も、分かったものではない」

「う……」

「そなたは、無自覚に過ぎる」

もう片方の腕が桜の前に回され、抱き寄せられた。

「神児が自らの名を教え、自分が一番無防備になる分化の間、そばにいてほしいと望む人間を、単なる友人として見ていると、そなたは本当にそう思うのか」

困惑して、眉をひそめる。

「だ……だって、エヴァさん自分で言ってましたよ、『友人であるあなたにいてほしい』って」

心底そう信じているらしい彼女に呆れて、深いため息をついたあと、また馬を進める。

「とにかく、安全が保障されるまでは、もうそなたを王宮の外に出す気はない。王の名において、神児の要請は断る」

「えっ……そんな」

慌てる桜をじろっとひと睨みして、王は黙りこくった。