デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

王宮に帰って来た頃にはもう日が暮れて、あたりには濃紺の帳が降りていた。

裏門に到着し、お礼を言って白木の馬車を降りた。

王宮は広いため、裏門から客用の宮まではかなり離れている。

(衛兵さんを探して、馬車を呼んでもらおうかな)

そう思って、きょろきょろとあたりを見回す。

たくさんのかがり火をせっせと灯していく人影が、いくつか走り回っていた。

神力で護られている神宮と違い、人の力での警護を主とする王宮は、やはり慌ただしくて活気がある。

「ええと……あ、あのう」

話しかけようとしたその時。 

「桜」

ふいに、一つのかがり火の近くから凛とした声がした。

驚いてそちらを見ると、カツン、という蹄鉄の音と共に、炎の色に照らされた美しい人が、月毛の馬に乗ってゆっくりと歩み寄ってきた。

「王様……!」

驚く桜の前で、軽い身のこなしで下馬する。

その姿に気づいた衛兵達が、慌てて深く礼をした。

「許す。礼を解き、勤めに戻れ」

ひら、と手を振って言い、そっと桜の手を取った。