デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

しゃ、しゃべった………。

思わず目を丸くして、相手を見つめる。

「神児様が、あなた様の事を『魔』ではない、と仰いましたゆえ」

「あ…そ、そうですか……でも、すごいですね、神児さんて……何でも分かっちゃうんですね」

桜があわててそう言うと、その不気味なほど静かな目をぴたりと桜に向けて言う。

「神児様のお言葉は、神のお言葉です。そこに何の疑いも、間違いもございません。人の世のように、穢れも迷いもないのです。あなた様が仮にこの場で私の肉を喰らったとしても、あなた様は『魔』ではありません。神児様がそう仰ったのですから」

抑揚のない声でそういった後、また目を伏せて沈黙した。

桜は思わず顔が引きつる。

『自分が何者か』というのを、自分ではなく神だか神児だかに決められているようで、何とも居心地悪い。

「じゃあ、明日死ねと神児さんに言われたら死ぬんですか」

陳腐で極端な例えを思わず口にすると、すっとまた目線だけを桜に投げて、素っ気なく言った。

「神児のお言葉のままに」


そしてまた、静かになる。

「…………」

(この人たち、おかしいんじゃ……)

すっかり引いた桜はそう思う。

まるで盲信………狂信だ。
当然のようにしているその無表情が一層不気味だ。

『宗教』と言うものにあまり深くは馴染みのない世の中に育った人間には、抵抗がある。

不安が増していった。