桜は、この王宮に来た次の日の朝、アスナイが言っていたことを思いだしていた。
――“桜、基本的に、宮中では人の好意に注意しろ。化け物も裸足で逃げ出すような連中だっているからな”
アラエがそうとはもちろん言わないが、桜は何となくその意味がわかった気がした。
「……カナンの代わりには、誰もなれません」
ゆっくり、しかしはっきりとアラエの笑顔に告げる。
心なしか、そのえくぼの浮かんだ頬が強張ったような。
「私と仲良くなったって、得なんかありませんよ。王様はそんなバカじゃない」
口元の笑いが小さくなってひきつっている。
赤銅色の瞳が、桜の黒い瞳から揺れて逸らされた。
丁度客用の宮に着いて、桜は部屋に入る。
「私とカナンが仲良くなったのは、嘘をつかずに付き合ってくれたからです。そこに何の打算もなかった。それだけです」
「……お気に、障られたのなら、平にご容赦を……」
ぎこちなく一礼するアラエに、桜は困ったように言った。
「気に障ってなんかいません。でもアラエさん、アラエさんの代わりだって誰もいないんですし、私はアラエさんより年下ですし偉くもないんですから、そんなに頭を下げないでください。かえって困ります」
「は………」
思わず絶句する。
「じゃ、送ってくださってありがとうございました。また……ええと……明後日に」
小さく笑ってひらひらっと手を振り、部屋に引っ込む桜。
一人残されたアラエは、ポカンとそれを見送った。
――“桜、基本的に、宮中では人の好意に注意しろ。化け物も裸足で逃げ出すような連中だっているからな”
アラエがそうとはもちろん言わないが、桜は何となくその意味がわかった気がした。
「……カナンの代わりには、誰もなれません」
ゆっくり、しかしはっきりとアラエの笑顔に告げる。
心なしか、そのえくぼの浮かんだ頬が強張ったような。
「私と仲良くなったって、得なんかありませんよ。王様はそんなバカじゃない」
口元の笑いが小さくなってひきつっている。
赤銅色の瞳が、桜の黒い瞳から揺れて逸らされた。
丁度客用の宮に着いて、桜は部屋に入る。
「私とカナンが仲良くなったのは、嘘をつかずに付き合ってくれたからです。そこに何の打算もなかった。それだけです」
「……お気に、障られたのなら、平にご容赦を……」
ぎこちなく一礼するアラエに、桜は困ったように言った。
「気に障ってなんかいません。でもアラエさん、アラエさんの代わりだって誰もいないんですし、私はアラエさんより年下ですし偉くもないんですから、そんなに頭を下げないでください。かえって困ります」
「は………」
思わず絶句する。
「じゃ、送ってくださってありがとうございました。また……ええと……明後日に」
小さく笑ってひらひらっと手を振り、部屋に引っ込む桜。
一人残されたアラエは、ポカンとそれを見送った。
