デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

桜の問いに、微笑みを貼り付けたまま、

「ああ」

うなずいた。

「だから、私はもう大丈夫だ。お前が、手を繋いでくれなくても。それに、いくら王の客人とはいっても……」

「そっか……その子に悪いもんね、こういうお役目するの」

その声が、ぽつりと静かな部屋に落ちた。


またしばらくの沈黙の後、桜が言った。

「すごく寂しいけど……良かったね、カナン」

「……ああ」

「また、いつか気まずくなくなったら、私とも話をしてくれる?」

「ああ」

小刻みに震え始める右手を、たまらず左腕から外して着物の袖に隠した。

「桜……そろそろ、仕事に戻るから」

「あ、そうか。ごめんね」

「いや……私の方こそ、あんな事をしておいて、いきなりいなくなって………ごめん」

うつむいて震える小さな声に、桜は首を振った。


「じゃあね、カナン」


踵を返す、彼女の足元が見える。

思わず、カナンはその顔を上げた。