デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

この世界に来て、初めて向けられた優しさ。大きなマントの温かさ。

心のタガが外れたように、桜の目から涙があふれ出した。

他人の善意が、こんなに安心するものだったなんて。

『おわ…!?ちょ、泣くなよ、おい!悪かったって、いきなり剣なんか突き付けて』

桜の心情を誤解したシュリは、わたわたと取り乱した。ただでさえ、女性の涙には慣れていない。

言葉が通じないのに頭を悩ませながら、ぎこちなくマントの前をとじてやる。そして、とんとんと彼女の頭を少々乱暴になでた。

害意がないことを分かってほしい一心で。


「…ありがとうございます」

涙をぬぐいながら控えめに、桜はシュリへほほ笑んだ。


異世界の言葉と、桜の笑顔に一瞬ピタリと体が止まった。

そして、ホッとシュリも安堵の笑みを浮かべたのだった。