デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

昼が過ぎるまでやけに長い気がして、ソワソワと落ち着かなくカナンを待った。

(ええと……最初顔を合わせたら何て言おう…『昨日はゴメンね』?いやいや、軽すぎるよ…『怒ってる?』……だから何だって話よね……『また、普通に話をしてくれる?』……ダメだ、無神経…図々しいにも程がある……)

また、胸元に手をやった。

(うう…しかもネックレスをなくしたなんて分かったら………)

罪悪感に目をつぶり、ソファに座って顔をこすった。

はああ……と頭を抱えてため息をついた時、戸が叩かれた。

(カナンだ!)

「はぃ!」

若干声が裏返りながら、居住まいをただす。

カラ、と戸が開かれたが。

「失礼いたします。ご客人様、我が君がお呼びでございます。ご案内させて頂きます」

全く聞き覚えのない声が耳に届いた。

えっ?と思ってそちらを見ると、少しくすんだ黄緑の髪に、赤銅色の瞳の若い文官が顔を出した。

「あの……?」

ポカンとする桜を見て、ニコッと微笑んだ後、ひざまずいて一礼した。

「お初にお目にかかります。我が君の近侍をしております、アラエと申します」

桜よりも少し年上だろうか、穏やかで少し低い声が印象的だった。