デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

語尾を強める王に、また顔を上げた。

「はい」

「桜は納得すまいな」

「!」

スッとその紫の目を細めて、カナンを見据えた。

「おそらくは私が説明しても、お前自身の口から聞くまでは信じもせぬし、あるいはあれ自身を責めるかもしれぬ。お前に無体をしてしまったのではないか、と」

「そんな……」

動揺が、顔色に出る。

だが、そうかもしれない。

そういう娘だ。自分の心にしか、従わない娘。
だから、好きになったのだ。

「それで良いのか。それでも、お前はあれをあきらめるか」

最後にもう一度、王は聞く。

カナンは、目を閉じた。

あきらめるのではない。悟ったのだ。
もう、彼女を手に入れることはできないと。

無理やり身体を重ねたとしても、それは自分の選択だという。それどころか、カナンはきれいだ、自分は汚されないと言う。
自分が納得して、その心に従った結果であるなら、何をされたとしても、自分自身に恥じることはないのだと。

だから、どんなに彼女に酷いことをしても、きっと変わらず桜は清らかなままだ。やっぱりあの黒い瞳で、清廉な微笑みを真っ直ぐにこちらにむけるだろう。

桜が好きだという気持ちは、決して誰にも負けはしない。

けれど、彼女のその強い心が選んだのは、自分ではなかった。
打つ手など、もうありはしないのだ。