デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

カタン、と椅子から立ち上がりながら、あっさりと言った。

「では、今度はただの…桜に心を寄せる者として、お前に問おう」

ハッとして、カナンは顔を上げた。

「私や武官たちの、桜に対する思いは知っていような」

「はい」

「その上で、お前はこの役目を、自ら降りるという。その事がどういう意味か、どういう事になるか。………分かっていような」

静かな、しかし容赦のない言葉。

グッ、と唇を噛んで、また頭を下げた。

「………はい」

その姿をしばらく見ていたが、小さくため息をついた。

「お前の気性は、承知しているつもりだ。そのお前がこんな事を言い出すとはな」

「………」

「良いのか。捨てたものは、自ら手を放したものは、二度とは帰って来ぬぞ」

その胸にのしかかる言葉に、伏せた顔の下で、緑の瞳が揺れた。

「………わたくしには、過ぎたる娘でございました。あの娘の横に立って生きていける資格も、器もございません」

握った拳が、袖の下で震える。

今度は深いため息が、主君から聞こえた。

「あい分かった。……何があってお前がそのような答えを出すに至ったか……それを問うのは止めよう。だが、カナンよ」