デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

『瞳の色が、変わらなかっただろ』

当然のように相棒に言ったが、シュリはぽかんとしたままだ。

とたんに、同僚に向けるアスナイの表情が冷たくなった。

『…赤髪のトリ頭。お前は武官錬成校で何を聞いてたんだ』

容赦ない口撃が始まる。

『……習ったか?』

カリカリと冷や汗をかいている後頭部を掻きながら、シュリがヘラっと笑った。

『王都武官が、『魔』についての知識をつけさせられないわけないだろうが。…『魔』は、自分の生命の危機や感情の高ぶりを感じたら、瞳の色が変わる。王族は金色に、それ以外の者は真紅に』

全く覚えがない。あるわけない。座学は席に着いた瞬間、眠気が襲ってきていたのだから。

『おい筋肉バカ。必要最低限の知識は持っておかないと、お前死ぬぞ。もうお前に『覚える』なんて高等なことは要求しないから、そのデカイ図体に教科書の文言をタトゥーにでもして彫っとけ』