デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「………」

「お前……お前……は……」

部屋の灯を受けて揺れる、黒い瞳を見た。

「お前が選んだのは、私じゃない。………我が君だろう?なのに、何で……」

「…言ったでしょ、カナンに信じてもらいたかったの。嘘じゃないって。カナンは、大事な人だから」

「だからって、お前!私に汚されていいのか。我が君を、あきらめられるのか!」

めちゃくちゃだと思いながらも、止まらない胸の痛みに、カナンは問い詰めた。

するとまだ少し青い顔のまま、けれどその緑の瞳を真っ直ぐに見つめて、桜は言う。

「私は、汚されないよ。カナンになら。カナンはきれいだって、言ったでしょう?」

目を見開いて固まる彼の頬に、おずおずと手を伸ばした。

「納得した事なの。私の心はあげられなかったけど……カナンに信じてもらいたかった。こんな私の事、好きって言ってくれたから。私、カナンが悪いなんて思わないし…後悔もしないよ。私が自分で選んだことだから」

ゆっくりと、金髪の少年のきれいな顔が、泣き顔のように歪んでいく。

かくん、と糸が切れたようにその顔が下を向いた。

「………」

黙って、桜の上から体をはずした。