デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「待って、カナン。せめて水を飲まないと」

脱水になってしまう、と桜が心配してその袖をつかもうとした。

「お前に関係ない!」

後ろ姿のまま、それを拒絶した。

動きを止めて、行き場を無くした手を苦しく握る桜。

「カナン……」

もう、こうなった以上、追いすがることはできない。
さすがに桜でも、それくらいはわかった。

すると、部屋の戸に手をかけながら、カナンは肩を揺らして喉の奥で小さくクックッと笑った。


「別に……お前が悪いわけじゃないさ。私がバカだったんだ」

小さくうなだれ、金髪が揺れている。

「お前の言葉を真に受けて……勝手に舞い上がって、分をわきまえずに、過ぎた望みを抱いたから」

「そんな……」

「当たり前だ。こんな、汚れた人間……受け入れられるはずがなかった」

カラ、と戸を開け、雷と雨音だけの暗闇へと出ていこうとする。

たまらず、桜は声を上げた。

「カナン……!私、私は、カナンに嘘なんか、ついたことなかったよ」

「………」

「今も、これからも、つかないよ。ほんとの事しか、言わないよ!」