デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「ぐ……!」

脂汗が噴き出し、カナンは口元を押さえた。

強烈な吐き気にくずおれそうになりながら、よろめく足で戸口へ出ていこうとする。

桜はその豹変に驚いて、思わず駆け寄った。

「カナン!」

後ろから彼の腕を取り、震える手が口元を覆っている、その真っ青な横顔を見た。

「カナン、どうしたの!しっかり」

なおも部屋を出ていこうとするのを押しとどめる。

「気持ち悪いの?…そうなんだね!?来て、こっち!」

抵抗するのも構わずにぐいぐい引っ張り、湯殿の扉を開けた。

常に湯船に湯があふれ、サラサラと石の床に小さな流れを作っている。
その隅にカナンを連れて行き、そっと顔を下に向けてしゃがませた。

「いいよ、吐いちゃえ。少しは楽になるはずだから」

頭を振って、立ち上がろうとする。
急いでそれを止めた。

「ダメだってば!我慢しちゃ。恥ずかしくなんかないよ。……ほら」

その優しい声に、張りつめていた糸が切れた。

「う……」

ゴホッ、と咳きこみながら、激しく吐き戻す。

温かくて柔らかい彼女の手が、ゆっくりと背中をさする。
時折赤子をあやすように、優しくトントンと叩いた。