デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「違う……違うの、カナン。私」

「そうだよな?お前……ただすねてるんだろ?」

ゆっくりと、彼は顔を上げて桜を見た。

眉はひそめられ、暗い緑の瞳が、すがるように小刻みに揺れている。
引きつった小さな微笑みが震えていた。

「………なあ、そうだろ?」

「あ………」

その表情に、桜は絶句する。

「桜」

一歩、カナンが桜に近づいた。思わず彼女は後ろへと下がる。
そうやっていくうちに、桜の背中が壁にぶつかった。

ゴロゴロと、雷鳴が夜空に鈍く轟いた。

少しして、部屋が一瞬真っ白に閃く。

カナンが、桜の前に立つ。

「まだ……お前の気持ちは、分からないんだよな。まだ、考えてるんだよな?……ゆっくり考えろよ。私は待つのは得意だから、だから」

「カナン」

今度は桜が、相手の言葉を切った。