デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

(だめ……だめ!!)

渾身の力で、顔をそむけようと首をひねりながら、相手の体を押し返した。

一瞬それに怯んだように、顔をつかむ両手の力が弱まった。

「だめ!」

唇を外しながらそう小さく叫んで、体を離した。

息を整えながら、黙ってうつむいてしまったカナンを見た。


もう、だめだ。

今、分かってしまった。

私は、カナンの気持ちには。

私は、私は―――。


「………まだ、怒ってるのか?」

ぼそっと呟くその声は、雨音に消されそうなくらいに小さく、虚ろだった。

「え……?」

何のことか分からず、戸惑いの声を漏らす。

「昼に……お前に、キツい事を言ったから……」

「あ……」

己の役目をまっとうしろと叱責されたことを思い出した。

眉を寄せ、目を細めて、桜は首を振った。

ああ、告げなければいけない。