デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

シュリが疑うのも無理はなかった。

地下に住まう『魔』と呼ばれる妖(あやかし)―。

地上の『人』とはるかな昔から敵対する彼らは、皆一様に黒髪黒い瞳をしている。

空を舞い、『魔力』を使う者もいる。そして何より、彼らの主な食糧は『人の肉』だった。

そのため、この世界の地上の者にとっては、『魔』は忌むべき存在であり、憎悪の対象だったのだ。


―が、桜がそんなことなどもちろん知るはずはなく、目の前と背後に立つ二人をどう切り抜けようか、疲れた頭で一生懸命に考えていた。

『おそらくな。この者が我々が探していた者だろう』

『マジか…『魔』以外で黒髪っているんだな』

『確かめてみる』

アスナイは事もなげに言ったかと思うと、目にもとまらぬ速さで、桜の首を両手で締め上げた。

「あ…っ…!?」

優しげな外見からは想像もつかないほどの力。
みるみるうちに体の中の酸素がなくなっていく。