デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「わっ……びっくりした。だ、誰だろ」

暗闇の中、戸を叩く音に小さく飛び上がって、桜の思考はあと一息のところで中断された。

そろそろと足を進めて、戸口までたどり着く。

「はい………」

カラ、と戸を開けた。

暗闇に降りしきる雨の音が響く中、柔らかなランプの光に照らされて、キラッと影とともに揺れる明るい金髪が目の前にあった。


「カナン………!」

桜の驚きの声に、少しうつむいていた顔を上げる。
前髪で隠れて見えなかった緑の瞳が、ゆっくりと桜を見た。

(……?)

何だか、いつもと雰囲気が違う……ような。

口元にわずかに微笑みを浮かべてはいるが、その瞳はいつものように静かではなく、何か分からない感情に暗く揺れていた。

「どうし……たの…。お仕事、終わったんでしょう?」

そのいつもとは違う様子に、少し動揺した。

「…灯、入れに来た」

いつになく低い声で、ぽつんと静かに言う。

「あっ…あ、ありがとう」

「入るぞ」

そう言って、カナンは履物を脱ごうとした。