そう気楽に信じ込んで、じっとランプの光を見つめながらたたずむカナンの耳に小さく届いたのは、桜の歌声ではなかった。
「………?」
渡り廊下の闇の向こうから、揺れるランプの光と共に、少し言い合っているような男女の声が聞こえてくる。
なんとなく、宮の出入り口近くの大きな植え込みの中に、巧みに身を隠した。
そのまま、その声の主たちを待っていると。
(……我が君!)
王が自ら近衛も連れずに、桜を送って来ていた。
思わず息を呑む。
桜が夜目にもその頬を赤くして、少し怒ったような足取りでカナンの隠れている植え込みの方へとやってきた。
「わっ」
かと思うと、バランスを崩しながら、王の方へとまた体を向けた。
「……明日も、深宮に呼ぶからな。拒否なんか、させない」
聞いたことのないような、感情がむき出しの主君の声に驚いたが。
「……逃げも隠れもしませんよ。私は王様に対してやましいことなんか、ないもん」
桜の、その信じがたい程のくだけた言い方の抗議に、カナンは目を見開いた。
そして次の瞬間、王に抱きすくめられる彼女。
「!」
ズキッと鋭い胸の痛みに、思わず目をそらした。
強く唇を噛んで、気配を消すことに徹する。
主君が、桜への思いを日に日に深めているのは分かっている。分かっているが、こうして目の前でそれを見せつけられると、どうしても動揺した。
「………?」
渡り廊下の闇の向こうから、揺れるランプの光と共に、少し言い合っているような男女の声が聞こえてくる。
なんとなく、宮の出入り口近くの大きな植え込みの中に、巧みに身を隠した。
そのまま、その声の主たちを待っていると。
(……我が君!)
王が自ら近衛も連れずに、桜を送って来ていた。
思わず息を呑む。
桜が夜目にもその頬を赤くして、少し怒ったような足取りでカナンの隠れている植え込みの方へとやってきた。
「わっ」
かと思うと、バランスを崩しながら、王の方へとまた体を向けた。
「……明日も、深宮に呼ぶからな。拒否なんか、させない」
聞いたことのないような、感情がむき出しの主君の声に驚いたが。
「……逃げも隠れもしませんよ。私は王様に対してやましいことなんか、ないもん」
桜の、その信じがたい程のくだけた言い方の抗議に、カナンは目を見開いた。
そして次の瞬間、王に抱きすくめられる彼女。
「!」
ズキッと鋭い胸の痛みに、思わず目をそらした。
強く唇を噛んで、気配を消すことに徹する。
主君が、桜への思いを日に日に深めているのは分かっている。分かっているが、こうして目の前でそれを見せつけられると、どうしても動揺した。
