仕事を終えたカナンは、同僚に挨拶した後、公宮の正面入り口に向かった。
桜が初めてこの公宮に来た夜のように、帰宅する臣下のため、正面の小さな出入り口は毎日開けてあるのだ。
明日の予定や、今日終えた仕事の事を頭の中で黙々と整理・確認しながら、少しだけうつむき加減で歩く。
しばらくして小さく息をつき、顔を上げた。
ふと、通路の分かれるところで足を止め、チラリとそのネコのような目が、深宮と客用の宮へ続く右の方向を見る。
表門のある左へと歩きかけたが、ためらうように一旦止まって、くるりと右へと方向転換した。
(……あいつの部屋に、灯が入れられているか……確認するだけだ。客人をもてなせと、最初に我が君に命じられているからな)
そう自分の心に言い聞かせて、ランプを手に大股で歩きだした。
