デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「………」

しばらく呆然とその場に突っ立って、ランプを持つ後ろ姿が闇に小さくなっていくのを見送った。

王に言われた言葉で生まれた、頭の中の小さな混乱を収束できずに、そっと今唇を受けた頬をなでながら部屋に入った。

灯が入れられていない部屋は真っ暗で、ただ外の激しい雨と近づく雷鳴の音がするばかりだ。

手探り足探りでソファを見つけ出して、ぽす、とそこに腰掛ける。

(どう…どう…どういう、意味だろ……)

さっきの、あの言葉は。

(王様と、薄紅女官さんとのことが、嫌……何で……)

外の荒天の音はやけに遠くに聞こえて、自分の心臓の音だけが頭に響いている。

桜の頭と心が、ようやく一つの事実を直視して認めようとしたその時。

―――トントン。

静かに戸が叩かれた。