深宮の入り口に出ると、朝からの荒天そのままに、いつも夜空を彩る星や月は真っ黒な雨雲に隠れていた。
(うわ、暗い………)
ゴロゴロと雷の不穏な音も響いて、さっき王に強がってしまったものの、送ってくれるのはとても有難かった。
「我が君、お出になられますか」
戸の前に控えていた鋭い眼光の近衛の一人が、二人に気づいて礼をした。
「ああ、客人を宮まで送る。警護は要らぬゆえ、汝らは引き続きここで待て」
忠実な武官は、また一礼した。
強風が大雨をまとって吹きすさぶ中、二人は嘘のように静かな渡り廊下を歩きだした。
ちら、と紫の瞳が、桜の横顔を見る。
静かに目を伏せて淡々と歩いていた。
夜の闇に清く白く浮かぶ、その肌。
手を取りたかったが、さっき黒い瞳で凛と見据えられて言われた言葉が胸に刺さっている。
何だか彼女とは反対に、自分がとんでもなく汚れているようで、もどかしさにそっと眉をひそめた。
今まで他人に対して自分を後ろめたく思ったことなどなかった彼は、少しの屈辱を感じる。
……星のような娘だ。
ふいに、そんな思いが心に浮かんだ。
いつも変わらぬ位置で輝いていて、手を伸ばせばすぐにとらえられそうなのに、本当はずっと遥か彼方にあるもの。
桜への愛情を自覚したあの夜に思い出した、天文博士のあの言葉が、またよみがえった。
(うわ、暗い………)
ゴロゴロと雷の不穏な音も響いて、さっき王に強がってしまったものの、送ってくれるのはとても有難かった。
「我が君、お出になられますか」
戸の前に控えていた鋭い眼光の近衛の一人が、二人に気づいて礼をした。
「ああ、客人を宮まで送る。警護は要らぬゆえ、汝らは引き続きここで待て」
忠実な武官は、また一礼した。
強風が大雨をまとって吹きすさぶ中、二人は嘘のように静かな渡り廊下を歩きだした。
ちら、と紫の瞳が、桜の横顔を見る。
静かに目を伏せて淡々と歩いていた。
夜の闇に清く白く浮かぶ、その肌。
手を取りたかったが、さっき黒い瞳で凛と見据えられて言われた言葉が胸に刺さっている。
何だか彼女とは反対に、自分がとんでもなく汚れているようで、もどかしさにそっと眉をひそめた。
今まで他人に対して自分を後ろめたく思ったことなどなかった彼は、少しの屈辱を感じる。
……星のような娘だ。
ふいに、そんな思いが心に浮かんだ。
いつも変わらぬ位置で輝いていて、手を伸ばせばすぐにとらえられそうなのに、本当はずっと遥か彼方にあるもの。
桜への愛情を自覚したあの夜に思い出した、天文博士のあの言葉が、またよみがえった。
