デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

その言葉に一瞬頭が真っ白になって、見開かれた黒の瞳が揺れた。

今更ながらに、あの妖艶な薄紅女官の誘うような微笑みが、ぐるぐると頭を回る。

自分とは真逆の、美しい顔とワンピースから浮き上がる魅惑的な身体。

また、二人で外出したときの、あの嫌な胸の痛みが湧き上がってきた。


“まさにそれが恋じゃございませんか”


表情を見られたくなくて、すぐに顔を伏せる。


(もう、最っ悪)

たったこれくらいで、唇が震えてしまう。
目の奥が熱くなって、ゆっくりと目の前の食べかけの夕餉の膳がにじんでいく。

(好きじゃないもん。こんな、女の人と関係持ちまくってて、それをこうやって偉そうに言う人なんて)

泣きたくなるのは、バカにされたからだもん。

でも、今自分がされたような事を、いやもっと先のことを、まさにここで。

そう気づくと、もう一秒だってこんなところにいたくない、と思った。

「ごちそうさまでした。帰ります」

硬い声で言って、そそくさと立ち上がった。

「いくらも食べていないではないか」

「お腹いっぱいになったので」