デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

そんな桜の百面相を、王は静かに見つめていた。

「………」

カタン、と箸を置く。

「……謝らぬからな」

ぽつんと、低い声が桜に向けられた。

「え」

思わず顔を上げると、紫の瞳が少し睨むように自分に向けられている。
その頬は、淡く染まっていた。

「あの女官さえ邪魔をしなければ、今ごろそなたは私のものになっていたはずだ」

「なっ…」

ボッと顔が火照り、桜は絶句して箸を持ったまま硬直した。

「そ、そんなわけないじゃないですかっ」

「好きな女を手に入れられる機会がおとずれたら、指をくわえて見ている男などおらぬわ。そなたとて、私に応じたではないか。……望んでいるように見えたがな」

ふん、と横を向く。

「違います!ビックリして、どうすればいいかわからなかっただけです!」

「そうは見えなかったが?」

「デタラメ言わないでくださいっ」

心の真ん中を容赦なく言い抜かれ、ますます赤面して首を振った。

「デタラメなどではない。経験に基づく確信だ」

言ってしまってから、ハッと口をつぐんだ。