デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「あっ…や、恥ずか、し……」

思わずその手を押しとどめようとした時。

―――コンコン。

「!」

戸口の向こうから、無表情な声が、小さく二人の耳に届いた。

「失礼いたします。我が君、夕餉をお持ち致しました。膳の準備をさせて頂いてもよろしゅうございますか」

そのあまりに日常的な聞き慣れた声に、ハッと桜は我に返る。

「ひゃっ!!」

次の瞬間には、ピャッ、と王の下からいなくなった。

シュバッと寝台から降りて、心臓がバクバクの胸をさすりながら目を回す。

(なななな何やってんの何を、私!!いいい今、何をされようとしたの!何?!えっ!?ナニって何!?)

動揺のあまり、日本語が狂っている。

桜に逃げられた王はというと、黙って戸口の方を向いたため、桜の方からは後頭部しか見えず、その表情は分からない。

が。

「……………………………」

絶対零度の空気が、その後ろ姿からビリビリと伝わってくる。

それは雰囲気と言うより、殺気に近かった。