デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~


「きゃっ!」

とにかく必死で走り続けていた桜は、ついに足を止めた。

前と後ろを土煙を上げた馬にさえぎられて、思わず目をつぶった。

コホコホとせき込みながら、手でまとわりつく埃を払う。

(…囲まれた……)

この馬に乗った二人は何だろう。一体、今度はどんな目に――

絶望的な気分でいると。


カチャリ。


「!?」


鋭い剣の切っ先を顔へ突きつけられ、固まった。

『おい、お前』

馬上に目線をあげると、厳しい目をした赤髪の青年―シュリがいた。

『魔か、人か。何でそんな姿をしている。どこから来た?』

(何言ってるの…?この人…)

桜は困惑して、ふるふると頭を振った。