デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

ぱっと下を向く。

ドキドキと、心臓が暴れる。

これまでだったら、何とかごまかそうとするか、あわてて離れていたのだが。

きゅうっと胃の上あたりがしびれて、なんだか甘い温かさがあふれてきた。

少し顔を上げて、指を絡めて握られた左手を見つめた。

黒い瞳がまた潤んだ。
胸にわきおこった、小さなときめきのままに、

「………」

きゅっ、とその手を握り返した。

その様子に一瞬目を見開いてすぐに細めると、そのままゆっくりと体を反転させていく。

「?……あ、王様…?」

真顔で目線は外さず黙ったまま強い力で押されていき、今度は桜が寝台に仰向けに留められた。

さっきまでのおどけた表情も、優しい微笑みもなく、じっと自分を見下ろす美しい顔。


「………そなたが、欲しい」


低い声でそうつぶやくと、固まって動けない桜の唇へと、頬を傾けた。