そんな時、今まではなすすべなく吐き気や激しい自己嫌悪と闘っていた。
自分の望む未来をあきらめなくてはならなかったそれに、その都度憎しみを募らせていた。
けれど。
――“ありがとう、カナン。カナンがいてくれてよかった”
この渡り廊下で、あの黒髪の娘に嬉しそうに礼を言われた時、初めて近侍になってよかったと思ったのだ。
それからだったと思う。
こうして過去の白い腕に絡めとられそうになった時、彼女の笑顔や、繋いだ手の温かさを思い出すようになったのは。
真っ直ぐ自分の目を見て、丸ごと肯定してくれて、対等の存在として頭を下げてくれた、見知らぬ世界から来た娘。
彼女がいるだけで、少しだけ自分に自信が持てるようになった気がする。
だから最近は宮中の人間と接するときも、今までになかったような心の余裕があった。
(桜……)
雨雲に覆われた暗い空の下、そっと目を閉じて、大好きな少女の笑顔を思う。背後から自分を追ってくる過去が、それだけで泡になって消えていくようだ。
(……こんな日もあるさ。我が君が、桜との食事を強くお望みになったのだろう。あいつの事だ、きっと断れなかったんだ)
そう強く思い直して、公宮への歩みを早めた。
自分の望む未来をあきらめなくてはならなかったそれに、その都度憎しみを募らせていた。
けれど。
――“ありがとう、カナン。カナンがいてくれてよかった”
この渡り廊下で、あの黒髪の娘に嬉しそうに礼を言われた時、初めて近侍になってよかったと思ったのだ。
それからだったと思う。
こうして過去の白い腕に絡めとられそうになった時、彼女の笑顔や、繋いだ手の温かさを思い出すようになったのは。
真っ直ぐ自分の目を見て、丸ごと肯定してくれて、対等の存在として頭を下げてくれた、見知らぬ世界から来た娘。
彼女がいるだけで、少しだけ自分に自信が持てるようになった気がする。
だから最近は宮中の人間と接するときも、今までになかったような心の余裕があった。
(桜……)
雨雲に覆われた暗い空の下、そっと目を閉じて、大好きな少女の笑顔を思う。背後から自分を追ってくる過去が、それだけで泡になって消えていくようだ。
(……こんな日もあるさ。我が君が、桜との食事を強くお望みになったのだろう。あいつの事だ、きっと断れなかったんだ)
そう強く思い直して、公宮への歩みを早めた。
