デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

灯が充分に入れられている部屋は暗くはないが、雷がおさまった後も、激しい雨音が響いている。

二人とも言葉を発しないから、なおさらだった。

「………」
「………」

自分の行動に自分で戸惑い、恥ずかしくて顔が上げられない桜を、揺れる紫の瞳がじっと見つめている。

こめかみのあたりに、心臓の拍動が大きく聞こえていた。

何百年ぶりか、それとも生まれて初めてか、痛いほどの胸の高鳴りに、もう一度小さく喉をならした。

「桜……」

わずかに身じろぎをして、そっと黒の瞳が自分を見る。

「……はい」

少し潤んで、目もとが赤い。

思い切り抱きしめて、もしや、自分を好きになってきてくれているのか、と聞きたいのをこらえた。

……性急に事を運ぼうとしたら、きっとこの娘は引いてしまう。

なんとなく、今までの経験で彼はそれを悟っていた。

大事に、優しく彼女の気持ちを育てて、すべてを手に入れたい。

けれど、今これだけのことが、とても嬉しくて。

もう少し、踏みこんでみたくなった。

考えた挙句、桜にひとつ提案をした。