デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「ん?」

目を丸くしてこちらを見る相手を直視できずに、ぱくぱくと口を開け閉めする。

恥ずかしいけれど、離れられると寂しくて。

でもそんな事、口に出せない………。

「あの……あの……」

「……うん?」

「………えと…本当は……雷、少し怖いんです」

下手な嘘が、バレませんように。

「だから、あのう…もう少し、側に寄ってもいいですか」

言いながらおずおずと彼の顔を見上げると、わずかに驚いた顔をして、くすぐったそうな笑顔になった。

「なぜそんな、おかしな強がりをするのだ」

ぐい、とすぐに腕を引き寄せて、自分の胸に抱く。

(ちょっ……ここまで近くなくていいよ!)

ぶわっと赤くなって、おたおたと視線をさまよわせた。

「……可愛い」

もっと目を細めて、嬉しそうに呟く。そっと黒髪に頬を寄せた。

「可愛くないです。からかわないでください……」

ますます困って恥ずかしさに小さくなると、ふふ、と笑い声が上から降ってきた。

「からかってなどいない。…どうすれば、信じてもらえるのだろうな。どうすれば、私を好きになってもらえるのだろうか」

外の激しい雨の音にもかき消されることなく、桜の耳にその言葉が届いた。