デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

「…ふふ、何ですか、それ……」

思わず泣き笑いになった。

「いつも独りとは言ったが、そなた、元いた世界で本当に男から言い寄られたことなどないのか」

ゆっくりと桜の髪を撫でながら、少し首をかしげる王に、とんでもないと頭を振った。

「ないですないです!ほんとに、一度も。目が合うだけで叩かれたりしてたくらいなんですから……だから、王様がその……私のことを、す、好きって言うのも不思議で」

そう言うと、ふん、と唇の端を持ち上げて冷たく笑った。

「……成程な。女を見る目のない馬鹿共ばかりだったとみえるわ。まあ、こちらにとっては幸いだったがな」

その言葉に、桜は苦笑いした。

「それは…かばいすぎだと思いますけど、確かにそうでなかったら、こちらの世界に来ることもなかったでしょうね」

殴られて、足を滑らせて川に落ちたことから始まった、この異世界との繋がり。

そう思うと、今こうしているのが本当に不思議で、奇跡だ。

生きているなんて。異世界の言葉を喋ってるなんて。

それから……

ふと、自分を見つめる紫の瞳を見返す。

目線が合い、優しく微笑むそのきれいな顔を見て、ドキリと心が跳ねた。


“まさにそれが恋じゃございませんか”


あの言葉がよみがえって、顔が熱くなって下を向いた。