デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

意外な言葉に、思わずまばたきを繰り返した。

「……そうですか?」

桜の小さな声に、微笑んだまま、ゆっくりとうなずく。

「怒りや憐れみを向けるということは、その人間が気になって仕方がないからだ。こうあってほしいという理想と離れているから、そんな態度を取るのだろう?やっぱり愛しているから、嫌いになりきれないから、余計に苦しいのさ」

「………」

にわかに信じられず、少し眉をひそめた。

「人間には、二通りいると私は思う」

空にくすぶる雷鳴が小さく聞こえる中、王は言う。

「自分が寂しい思いや辛い経験をした場合だ。それを糧にして、他人に同じ思いはさせまいと、心から寄り添おうとする優しさを持つ者。他方で、運命を呪い、自らの境遇を恨んで、他人を食い物にしてでも自分の欲望を満たそうという者」

じっと、紫の瞳が彼女を見つめた。

「欲望というものは、やはり人間の行動原理そのものだ。理性よりもずっと強い。それが良い方向に働けば、素晴らしいエネルギーになるがな。この場合においては、とかく後者になってしまう者が多い。だが」

そっと桜の頬に手を添えて、微笑みを深くした。

「そなたは間違いなく前者の人間だ。……それだけで、両親はそなたをよく育てたと思うがな。そなたが分からぬだけで」