「どうしたんだ、何か困ってるのか」と口を開こうとしたカナンだったが、それより先に小さく桜が息を呑み、するっ、とその手を解いた。
気まずいような、困惑したような、複雑な表情で腕を組んで、またうつむいて歩く。
いつもなら、『……もう、カナン』と顔を赤くして困ったように恥じらいながらも、そのままなのに。
一言も言葉をかけられることなく、素っ気なく繋いだ手を解かれたカナンは、緑の瞳を揺らして静かに狼狽した。
指に縫い針を刺した時のように、プツリと胸が痛んだ。心の中で、小さな玉のような血が、ゆっくりと盛り上がる。
「……桜?」
真っ暗な空と、渦巻く黒い雲からの激しい雨音に消されるくらいの声で、カナンが彼女を呼ぶが、聞こえていないのか表情を変えることなく、黙々と歩いている。
「何だよ……さっきのこと、怒ってるのか?お前」
昼とは思えない暗さの中、思案顔の桜の横顔に、わざとつっけんどんな言い方で言葉を投げる。
「………」
「おい」
どこか上の空のようで、カナンの言葉は届いていないらしい。
そうしているうちに、深宮の入り口に着いてしまった。
そこで初めて、桜が顔を上げて入り口を見た。
「……」
どこか緊張しているような顔で、まばたきを多くした。
ふう、と小さく息を吐いて、静かに深宮の中にその姿が吸い込まれていく。
いつものような、『じゃあ行ってくるね、カナン』という言葉どころか振り返りもしない。
気まずいような、困惑したような、複雑な表情で腕を組んで、またうつむいて歩く。
いつもなら、『……もう、カナン』と顔を赤くして困ったように恥じらいながらも、そのままなのに。
一言も言葉をかけられることなく、素っ気なく繋いだ手を解かれたカナンは、緑の瞳を揺らして静かに狼狽した。
指に縫い針を刺した時のように、プツリと胸が痛んだ。心の中で、小さな玉のような血が、ゆっくりと盛り上がる。
「……桜?」
真っ暗な空と、渦巻く黒い雲からの激しい雨音に消されるくらいの声で、カナンが彼女を呼ぶが、聞こえていないのか表情を変えることなく、黙々と歩いている。
「何だよ……さっきのこと、怒ってるのか?お前」
昼とは思えない暗さの中、思案顔の桜の横顔に、わざとつっけんどんな言い方で言葉を投げる。
「………」
「おい」
どこか上の空のようで、カナンの言葉は届いていないらしい。
そうしているうちに、深宮の入り口に着いてしまった。
そこで初めて、桜が顔を上げて入り口を見た。
「……」
どこか緊張しているような顔で、まばたきを多くした。
ふう、と小さく息を吐いて、静かに深宮の中にその姿が吸い込まれていく。
いつものような、『じゃあ行ってくるね、カナン』という言葉どころか振り返りもしない。
