デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~

今カナンに感じたさびしさとは、全く違う。

肯定の代わりに黙り込む桜に、真顔に戻ったフラウが言った。

「………なら、桜様は、カナン様には男女としての愛情はお持ちではあられないんですのね」

「!」

静かに、しかし決定的で明快な言葉を突きつけられ、はっと息を呑んだ。

思わず目を伏せる彼女に、ルネが優しく言った。

「仕方がありませんわ。桜様はお一人ですもの。桜様のお心は、桜様にしか決められませんわ」

「………」

フラウも、桜をなだめるように言った。

「そうですわ。それに、人の心は変わるものですわ、桜様。お互いがお互いを心で縛らない限り。桜様だって、カナン様だって、これからどんな変化があるか、分かりませんもの」

ふと、女官と言葉を交わしていたカナンの後ろ姿を思い出す。

そうだ。さっき自分でも思ったように、カナンだって、ずっと私を好きとは限らないのだ。
もっと可愛くて、賢くて、カナンの隣に並んでもしっくりくるくらいの女の子を自然と好きになるかも知れない。

きっかけがたとえ私だったにせよ、少しずつ付き合う人の幅が広がれば、充分考えられる。

……王の事が、脳裏を過ぎった。

「あの、フラウさん、ルネさん」

「はい」

「優しく触られると何だか胸がフワフワして、その人に『可愛くない』って言われたらすごく悲しくて、他の女の子に囲まれていたらモヤモヤして、その人に変な八つ当たりをしてしまう時って、なんだと思いますか」

医者の診断を仰ぐ時のように、自分が感じるままに聞いた。

二人の名医はフフ、と何でもない事のように笑った。

「まあ、分かりやすい例ですわね。まさにそれが恋じゃございませんか」